思い出に残るお客様(後編)

2009_0228エステ0050

私の不器用な説得を気の毒に思ったのか、お母さまは渋々という感じで何とか首を縦に振ってくれました。お嬢様のほうは気が変わらないうちに、という様子でさっと帰られ、残された二人には若干気まずい雰囲気が漂っていたことは、言うまでもありません(>_<)。

ここは気を使ってやたらと話しかけるべきか、あるいは何か普段と違ったサービスをするべきなのか?一瞬迷いましたが、いつもと変わらず普段通りの自分で通すしかないとも思いました。

普段ですと、お客様から話しかけられれば会話することもありますが、施術中は私も手技に集中したいので、ほとんど会話はなくなります。静かな音楽とともに時がゆったりと流れていき、夢と現実の狭間をたゆたう感覚と言ったらいいのでしょうか、そんな特別な時を過ごしていただければ、と考えています。

そんな訳で、ぎこちないというか、気まずいというか、そんな空気もなくはない(..)、状態のままに、施術は始まることとなりました。最初はそれが気になっていましたが、時間が経つにつれていつの間にか私も手技に没頭していきました。

仕上げの頃にはお肌はいつもの事ながらとても良い仕上がりになって、少しでも早くそのお肌を見てもらいたいという気持ちになっていました。はやる気持ちを抑えつつ、リクライニングベッドの背もたれを起こし、すぐにでも鏡で確認してもらおうと準備していたのですが、、、お母さまは起き上がると同時に間髪を入れずにこう言いました。
「次の予約をお願いします。」
私は「え?!」と驚き、(内心ではもちろん狂喜乱舞しておりましたが^^)そこは当然といった体で
「はい、ありがとうございます。」
と、フツーに答えました(^^ゞ。
そしてその日から、引っ越しをするまでの数年間、親子でサロンに通っていただくことになったのです。

人の価値観はそう簡単に変えることなどできない、という思い込みを見事にひっくり返された瞬間でした。そしてまだ経験の浅かった自分に、確かな自信をもたらしてくれた出来事でもありました。
アトリエSOPHIA 村田